エレガンス=自尊
青木十良/バッハ無伴奏第4番
+J.S.バッハのミュゼット、ショパン:チェロソナタより
「80歳を越してようやくバッハがわかってきた。研究するなら逆行するのがいい」と、夢中で始めたバッハの研究と録音。第6番から逆行し、10年を経てようやく4番まで辿りついた。
「弦楽器は音で参っちゃったです。感激したのはシゲティのベートーヴェン・アーベント」
原子物理学を志していた15歳の青木少年が、弦楽器の音に目覚めた瞬間である。
「シゲティのようにシュワッと弾けるシャンペンのような音が出したい」と、音色には特にこだわって研鑚に励んできた。さらに、弦楽器は、演奏空間と一体となってこそ本来の響きとなる、というのが青木の持論。ホールの響き、特に残響には徹底的にこだわって録音会場も厳選してきた。
三作目となる第4番は、2000人収容の所沢のミューズ アークホールで収録した。一作目の第6番は東京近郊の教会のようによく響く旧後藤美術館、つづく5番は525人収容で室内楽ホールとして響きに定評のある浜離宮朝日ホールでの収録だったので、収録会場はだんだん大きくなった。
「4番は山に譬えれば谷川岳。アルプスの高峰を制した名登山家でさえ、常に滑落の危険に晒される魔の山。弾き手の対応力と創意工夫が試されます。一見、無機質のようで、噛めば噛むほど味が出る作品なんです」と4番についても研究をとことん重ねてから録音に臨んだ。
エクストラ・トラックには、J.S.バッハのミュゼットを入れた。78回転のSP盤からの復刻で収録は1955年。青木十良というとチェロ、あるいは室内楽などのアンサンブルの指導者として現在は名が通っているが、この演奏から終戦の直前にNHKに嘱託として採用され、毎週のように生演奏で放送をつづけ、初演も数多くしてきた生粋のソリストであることがうかがい知れる。このSP収録の前年1954年には、ピエール・フルニエが初来日し滞在のホテルで演奏を聴いてもらっている。右手を押し込むボウイングが周囲には多かったが、「あなたのボウイングで良い」と言われ自信をもったという。
もう一曲ショパンのソナタの第1楽章をエクストラ・トラックの2曲目として入れたのは、ともすればチェロがピアノに埋もれがちなこの作品において、ピアノとの絶妙のバランスと両者に共通する目映いばかりの音色をお聞きいただければとの思いからである。
青木十良は良く弟子たちに警告を発している。「音楽は演奏する人間をさらけ出す。技術ばかり磨くと悲劇が起こる。もっと自分自身を磨きなさい」と。
そして青木十良がチェロ人生で最後にたどりついたのが、エレガンス=自尊である。青木十良は7月12日に満96歳を迎えるが、CDと同時に著作「チェリスト、青木十良」(大原哲夫著、飛鳥新社刊)が出版される。また、ドキュメンタリー映画も年内に上映される見込みである。
J.S.バッハ|無伴奏チェロ組曲第4番
EXTRA TRACKS
J.S.バッハ|ミュゼット(ガボット〜イギリス組曲第6番)SPより復刻 1955年録音
ショパン|チェロ・ソナタより第一楽章(2006年6月、浜離宮朝日ホールで収録)
青木十良(チェロ) 竹尾(鳥井)耹子、ピアノ(ミュゼット) 水野紀子、ピアノ(ショパン)
販売形態 品番 値段
CD NF20303 希望価格:2,600(税込)
発売日
2011年7月12日発売
録音
録音:2009年4月22日~24日 所沢市民文化センターミューズ アークホール
使用楽器
Stefano Scarampella di Brescia 1912
収録時 収録時93歳
ライナーノーツ
名登山家さえ悩ます「魔の山」/上坂 樹、バッハの贈り物〜新たなる福音/北村貞幸
 青木十良語録より
エレガンス=自尊
音楽の仕事、芸術の仕事をしながら、自分が何を求めているんだろうと、ずっと考えてきているわけです。
それが「エレガンス」なんだと、つい最近やっと発見したことに、自分でも驚いているんです。
そう、「エレガンス」に向かって、自分はやってきたと思います。
「エレガンス」といっても、単にオシャレとかというものではないんです。
「エレガンス」の根底にあるのは自尊です。
音が少々狂っても自尊というものは、ガタンと落ちます。
メロディーの線の具合がちょっとうまくいかなくっても、同じように自分の心が崩れますしね。
「エレガンス」の原語本来の意味には、自尊ということが入っていると思います。
日本語の「品格」にも通じると思います。
自分を信じ、他の人を尊ぶ。
それが全身にみなぎって表現できたときには、100パーセントよい音楽をやったと思いますね。
 同時発売:本の紹介

激動の時代を生き、バッハの名録音を残した
ひとりのチェリストの物語。 
著者:大原哲夫 定価:2200円(税込)
飛鳥新社刊、四六上製 328ページ

青木十良(あおきじゅうろう)、
96歳、音楽に己を問う。
激動の時代を生き、
バッハの名録音を残した
ひとりのチェリストの物語。(帯より)

■無伴奏第6番、5番についても、本文で大きく取り上げられています。

 ドキュメンタリー映画
elegance
自尊を弦の響きにのせて
ー96歳のチェリスト・青木十良ー
2011年上映(DVDでも発売予定)
制作:メディア・ワン
 
ページを閉じてお戻り下さい
Copyright(C) 2010 N&F All Rights Reserved.